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 「デジカメセンス

                        松崎蔵つくりたい広報部 松 本 晴 雄

 一年前に知り合った「鈍さん」、私は彼の本名を知らない。名刺をいただいたが置き忘
れて、住所も知らない。今年も来町してくださり、2度目の再会となった。でも「掲示板」
に画像の交換しているので、旧知の間柄にひとしい。

 鈍さんは話せるが、全く耳が聞こえない。紹介してくれた方から筆談を進められるが、
初対面のときから、私とは心を交流できた。ゆっくりと手振りをまじえて話せば通じるも
のなのである。的確に彼から反応が返ってくるのが嬉しい。

 静岡地震が起こる前々日(8月9日)、その再会となるのだが、場所はメールで伊那下
神社と連絡してある。汗を吹き出しながらリュックサック、手提げ一杯に撮影道具を持っ
た彼が現れる。

 まずチェンソーで木彫りをする宮司さんの作業を見させていただく。鈍さんは刃先の動
きを捉えようと真剣な眼差しでカメラを構える。彼のすごさは物語性のある画像にするこ
とである。耳が聞こえないことが、別のそれ以上の感性をつくってシャッターを押すのだ。
 カメラの手ぶれや、違った角度から撮れるよう手作りの台にレフ、レンズをつける。ま
た手の下に敷く手作り枕で手ぶれを防ぐ。そして誰もが見過ごす個性豊かな画像をものに
する。

 耳が不自由なことは決してハンディではなく、逆に特性を生んでいることを彼から学ぶ。
己は健常者だと甘えていると、取り残される恐れさえ感じる。

 そして「松崎夢の蔵」の作業現場へお連れする。ほんの短い時間だったが、ここに掲載
する写真のような「なまこ壁作業」の手順を画像にしてくれたのである。ご覧のように職
人の鏝捌きが見事に表現されている。おなじデジカメでもこうも違うものかと、敬服する
ばかりである。「たかがデジカメ、されどデジカメ」である。

 余談だが、鈍さんたちは身障者のグループで、毎年夏休みには来町され、シーカヤック
などハードな遊びを楽しんでいる。私は彼等に石部棚田の赤米・黒米から作られた焼酎「百
笑一喜」を差し入れる。なお、11日朝の大雨と地震に遭遇するが、無事であったことは
何よりであった。

 

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