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  「国文祭・グランプリ」

                       松崎蔵つくりたい広報部 松 本 晴 雄

 自ら「国文祭・グランプリ」と呼ぶのははばかれるが、「文化」というテーマを完全に
貫き通したのは、わが町「鏝と漆喰のアートフェステバル」であったと自負できる。

 本来、文化=「カルチャー」の語源は、「耕す」に由来する。だからどんな辺鄙な地に
あっても立派な「文化」が存在したのである。即ち「文化」とは、その土地の「生きる」
個性に他ならない。

 それが明治以後、西洋かぶれの「中央集権化」により、地方文化を卑下する傾向となり、
地方が暮らせる場所となりえなくなったのである。

 現に左官の町・松崎町でさえ「職人」という職業を差別化し、「月給取り」しか職場と
して認知しなくなった。グローバル経済となれば、地方に職場はなく、都会へ若者は流れ
て疲弊するばかりとなる。

 そんな時期に「左官」をテーマとする「鏝と漆喰アートフェステバル」として、国文祭
にノミネートしたのである。県下のガイドブックが手元にあるが、生活・職業を純粋にテ
ーマとするもの見出せない。着飾ったものが「文化」としたものが、大半なのだ。

 「夢蔵」は、蔵作りという作業を通して「神事から竣工」まで、「仕事と心の流れ」を
追求し続けた。それは地方の「職業・生活・精神」まで踏み込んだものとなった。

 これを高校生が「絵本・土蔵ができるまで」を作成し、シンポジウムの席上、藤田洋三
氏から「この絵本を作った高校生、作らせた人たちがいれば町は安泰、国文祭に賞があれ
ば最高賞」との評価がいただけたのである。

 蔵づくり現場はさることながら、シンポジウム「左官文化を語る会=自然素材とともに
暮らしたことを学ぶ」は、私の考え続けたことが、パネラーの言葉となり、改めて確認で
きたことである。

 コーディネーターとなった小林澄夫氏は「土の詩人」と呼ばれる左官雑誌の名編集長で
ある。氏がいたればこそ、狭土秀平(高山)、原田進(大分)、久住有生(淡路島)諸氏
などが中央に進出できたのだと知った。

 また、小林氏は地元左官・関賢助氏(蔵つくりたい代表)の寄稿文から発展「伊豆の長
八美術館」(石山修武設計)となった経緯を席上暴露?なされた。

 東京で修業された関氏は、長八出身地であることかから「左官のメーカー品」と呼ばれ、
それが左官業(長八作品保存会)に長年勤しまれた発心となったという。

 関代表は「土や砂、セメントを素材として「無形から有形」「粒子から流動体、乾燥し
て固形となって形をなす職業」と、左官業を表現された。素晴らしい最高の職業なのだ。

 また、狭土秀平氏は“風を感じる”という職業(左官は湿度、天候によって塗りを考え
る)から、「自然のおもむくままを壁に表現」すると、詩人めいた発言をなされた。そし
て各地の土の個性を見出され、業界のカリスマとなられた。その感受性は建物をとりまく
自然環境、他の仕事にまで興味を示している。

 原田進氏は、自家で稲作を有機栽培するのも壁材料「藁=スサ」が目標だったと、自然
との関わりを話され、両側の壁を通して部屋の居ごこちが左右されると話される。また、
外国事情にも明るく「日本の左官技術は優れている」と言われる。

 久住氏はまだ37歳の若手で、各方面で指導をされているという。

 誰の発言だったか分からないが「木は朽ちるが、土は永久に土として再生できるエコ」、
「左官が盛んになれば大工や鍛冶職などに波及して地方が栄える」、「衰退したと諦める
のでなく、自分に何が出来るかを発信すれば未来は開かれる」と申された。

 藤田洋三氏は「松崎町のなまこ壁が世界のオンリーワンとして売り込め」と最高の勇気
をくれた。また、同日「藤田洋三なまこ壁写真展」が開催されたが、全国を歩いて収録し
た写真と、壁のデザイン各種が展示され、改めて日本人の美意識の高さに感動し、「井の
中の蛙」であってはならないと感じた。

 翌25日は晴天に恵まれ、左官のカリスマたちが「夢蔵」のなまこ壁を「揃い踏み」し
て塗られた。私はそれを見ることが出来なかったが、原田氏の塗りと、地元職人と話す現
場を目撃し、素晴らしいイベントになったと感動した。

 小林、藤田、原田、挟土氏と直に挨拶し、名刺を交換していただいた。藤田氏にはカサ
・エストリータで歓談されるカリスマたちと「一緒にどうぞ」と誘われたが、そこは謙虚
な我が身、遠慮したのだった。

 なお、「光る泥団子つくり体験」「漆喰鏝絵体験」「長八まつり」も、多くの方が参加、
絶賛された。

 この国文祭イベントには「賞」というものはないが、私は地方文化、職人・職場を見直
したことにより「グランプリ」に該当すると信じている。 

 

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