「木釘つくり」
松崎蔵つくり隊広報部 松 本 晴 雄
皆様は「なまこ壁」が、一枚一枚荒壁に「平瓦」で貼られていることをご存じだろうか。
私がガイドしたお客様の中には、「荒壁の上一面を黒漆喰で塗り込め、それに形式美のた
め45度に白漆喰を塗ったのでしょう」と言われる方がいた。「一枚一枚など……、労力
も経費も大変だ」との発想である。
30センチ四方ほどの「平瓦」が45度になっているのは、雨水が垂直に、素早く落ち
る工夫なのである。出来るだけ下の漆喰に負担がかからないようにしてあるのだ。ちな
みに、なまこ壁一平米あたり現在の金にすれば6〜7万円かかるという。
瓦一枚一枚には、四隅に釘穴が開けられている。まず、瓦裏に漆喰をつけて荒壁に貼り、
その穴に木とか竹釘で固定させるのである。なにゆえ木とか竹かというと、鉄では腐食す
ると膨張して緩んでしまう恐れがあるからである。
この木釘にしても先人の知恵はすごく、「ビャクスギ」という松崎地方でよく庭木として
植えられているものから作る。木材の断面からお分かりのように「ねじれ」がみられる。
これを釘にして打ち付ければ、ねじ釘のように荒壁に食い込み安定するというのだ。
「明治商家・中瀬邸」時計塔の右側に、ビャクスギがあるのを思い出す方もあろう。あ
の木の枝が、「交通の妨げになるから伐ってくれ」という、苦情が役場に入った。早耳筋
のH氏がこれを聞きつけ、頂戴に預かったという次第なのだ。
今回の「松崎夢の蔵」ぐらいでも2,000本以上の数の木釘が必要となる。H氏は多
くの方が「夢蔵」にかかわったと意識が出来るよう、2、3の高校の生徒にこの釘作りに
参加願うようにしたい計画もあると聞く。
10月4日も会員にお願いして木釘作りのお手伝いを願った。以前の作業風景だが、
このように釘は打たれていくのである。まだ、小舞掻きも出来ない段階での話しであるが、
「木釘づくり」のお話である。
余談だが、ビャクスギは床柱にすると値打ちのあるものになる。以前、親戚の建築に使
われた時、その柱磨きを手伝わされたものである。竹をヒゴ状にして先を尖らせ、それを
束ねてゴシゴシと磨いた。親戚を訪ねその柱を見る時、いろいろな思いが去来する。
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